日本にはかつて、生き方に対する厳しくも美しい哲学がありました。その象徴が武士道です。
今日では、封建時代の身分制度や宮仕えの辛さの代名詞として揶揄されるケースも少なくありません。しかし、その根幹は「武士の情け」という言葉に込められた「強敵には闘志を燃やして戦いを挑むが、弱い相手には援助の手を差し伸べようとする思いやり」であり、「礼節を重んずる心」なのです。
礼節は、礼儀と節度。礼儀とは、挨拶にはじまる友好的な敬意であり、自分の利害に関わらず人間としての義をまっとうしようとする心がけです。節度とは、自分の欲求に対するブレーキであり、我が行動によって第三者に迷惑をかけることがないようにと自らを律する、内的な秩序です。
今の日本人が失ってしまったもの、そして取り戻さなければならないものこそ、この礼節であり、自分を取り巻くすべてに対する思いやりであると考えます。「礼」をもって、家族や仲間、隣人や地域社会へと輪を広げながら他人のために仕え、「節」をもって内省を繰りかえし、協調を求めていけるような社会基盤の中でこそ人間として、日本人として生まれた喜びや充実感を見出すことができるのではないでしょうか。
平成武師道、すなわち礼節を重んずる心。
今日の日本を憂慮する人、これからの日本を背負う人、すべての方とこの心を共有できれば、日本をもっと素晴らしい国にすることができ、日本人であることを誇れるようになるはずです。 |